翻訳デバイスの比較記事です。
旅行や仕事などで海外の人と話す機会がある場合、その言語が話せないと非常に不安があります。
そこで、ある程度の助けとして翻訳機を購入して持っていく人も少なくないのではないかと思います。
今回は、おそらく有名所である ili と POCKETAKという翻訳デバイス、
そしてスマホ等で使うことができる Google翻訳 の簡単な比較を行ってみたいと思います。
ili(イリー)
Image: iamili.com
一方向の翻訳に特化している翻訳デバイス。
興味深い点
相手の言語を翻訳できない点に不安を感じる人が少なくないと思いますが、実はこの製品ではそれが「できない」のではなく、「しない」事に変えたのだといいます。
株式会社ログバーCEO 吉田氏の発言によると、
双方向に翻訳できる機能があったとしても、
- 相手が使い方を知らない(使い方を説明するのに難儀する)
- 相手にいきなり機械を渡しても警戒される
など、ネガティブな要素が出てきてしまい必ずしも円滑なコミュニケーションができるわけではなく、むしろデバイスを使わなくなってしまう人が増えたことに着目。
そこで、「自分の意思を伝える」ことにフォーカスし、一方向翻訳機として「改良」を行ったのだといいます。
良い点
👍 オフラインで使える。
これは非常に重要で、魅力的なポイント。
Wi-Fi などでインターネットに接続する必要がないので、アクセスポイントを探したり接続する手間がなく、電波状況を気にする必要もない。
トラブルが事前に一つ取り除かれていると考えれば、旅行先や仕事などで不安が緩和されます。
👍 翻訳が速い。
ボタンを押しながら日本語で話しかけ、ほぼ遅延なしに翻訳してくれます。
👍 翻訳の音声がきれい
これも結構重要じゃないでしょうか?
機械がしゃべっているような、ガクガクした話し方はあまり感じられません。
気になる点
🤔 英語・中国語・韓国語への翻訳のみ対応(2018年3月末現在)。
🤔 相手の言語を翻訳できない(しない)。
製品のコンセプトでもあるためデメリットとは言えませんが、やはり意思疎通の不安はあるでしょう。
ただし、公式でもアナウンスされている通り、YES・NOで答えられる話しかけを心がけたり、ジェスチャーを混ぜるなどの工夫が必要となってきます。
しかしながら、見方を変えれば、会話で本来重要なことを意識することができるので、コミュニケーションの上達の助けとなってくれるような気もしますね。
翻訳機に全面的に頼るのではなく、基本的な会話や単語は理解しておくべきだという心得も意識させてくれるでしょう。
POCKETALK(ポケトーク)
Image: sourcenext.com
双方向の翻訳に対応している翻訳デバイス。
興味深い点
オランダの企業がクラウドファンディングで集めた資金を元に開発・リリースした Travis というデバイスがベースになっています。
良い点
👍 それなりの長文も認識できる
2~3文くらいの文章なら普通に翻訳できるし、台本などを読み上げると結構長く聞き取ってくれます。
ただ、途中で少し間が空くと自動的に翻訳が始まる事があります。
👍 画面がある
操作はタッチパネルの十字キーで、その他に液晶画面がついているので、吹き込んだ言葉や、相手が話した言葉を文字で確認することが可能。
ただし、画面の大きさの関係で文字が非常に小さい。今後アップデートなどで文字を大きくできるようになったとしても、そもそも画面が小さいので改善には限界がありそう。
👍 対応言語が多い
ネットに繋がなければいけないが、クラウド上(インターネット上)の翻訳エンジンのチカラを借りて動作するので、対応言語が多い。
SIMカードを利用する場合は、グローバルSIM ということで世界各地で利用できるが、対応していない国も当然あるので注意が必要。
気になる点
🤔 双方向だが手間がある
双方向の翻訳とは言え、リアルタイムに会話を翻訳し続けてくれるのではなく、おおよそ1~2文ずつ話すたびにボタンを押して翻訳するという使い方が基本。
会話のテンポを良くするツールではない点に気をつけたいですね。
🤔 設定や操作に難あり
おそらく、このデバイスの一番のマイナスポイントがこれ。
これは実際に操作をしてみて分かった事ですが、画面と文字が非常に小さく、操作感もスムーズとは言い難い。
スマホやモバイル機器、IoT機器の操作に慣れている人は説明書がいらないレベルなのは確かですが、そうでない人にとっては説明書を読みながら操作してもうまく使えないような気がしました。
ちなみに、ショップの店員も操作に手こずっていて、タッチパネルの操作がうまく入らない事もあるようでした。
最後に、ネット接続が必須なデバイスのため、接続が切れた際などのトラブル対処を適切に行える、知識がある人に向いていると感じました。
普段からスマホやIoT機器を使いこなしている人にとっては難しくないはずです。
🤫 Google 翻訳などに対する優位性が微妙
デバイスを手に持ち、Wi-Fi か 3G が必須で、翻訳はボタンを押して使う…
となると、
「それって、3GかWi-Fi を繋いだスマホで Google翻訳すれば良くない?無料だし。」という疑問が浮かぶ。
公式サイトによると、以下のように回答されている。
Q. 翻訳アプリとの違いは?
A. 次のような違いがあります。
・人混みでも人の声が認識しやすいノイズキャンセル機能搭載の内蔵デュアルマイク
・騒がしい場所でも使える内蔵ダイナミックスピーカー
・バッテリーの持ち時間が長い
・起動が速い
・操作が簡単
・スマートフォンを他人に利用させる心理的負担がない
う~ん、訴求力に乏しいように見えるが…どうでしょうか。
そして「スマホでいいじゃん」「Google翻訳でいいじゃん」という意見を覆せるほどの優位性は特に見当たらないのが残念。
あとこれは性能とは関係ない話ですが、
僕がショップで手にした機体は中国語の繁体字(香港や台湾で主に使用)を表す国旗が中国国旗であるのにはちょっと驚きました。
下手したら、台湾の方から反感を買うのではないか…
Google 翻訳
PCなどからWebサービスを使っている人が多いGoogle翻訳ですが、
実はスマホでもアプリをダウンロードして使用することができます。
実際の画面の様子は以下の通り。
⬇ アプリ初回起動の様子。デフォルトで 「オフラインで翻訳する」にチェックが入っている。
※オフラインで使えるのはテキスト翻訳のみ
⬇ オフラインでテキスト翻訳する際に使用可能な言語も多彩。
ただし使う言語は事前にダウンロードが必要な点に注意が必要(言語によるが30MB程度)。
画像では表示し切れていないですが、中国語・韓国語は当然含まれています。
なお中国については、設定から簡体、繁体が選択可能で、
さらにそれぞれ中国の簡体、香港の簡体、広東語の繁体、台湾の繁体が選べるようになっています。
カメラで翻訳
手元にあるガイドブックや本、チラシなどのテキストを、撮影しながら翻訳することが可能。
⬇ カメラで本を撮影した後の様子
⬇ 検出された部分から、実際に翻訳したい部分を指でなぞって選択する。直感的な操作が面白い。
⬇ 翻訳結果を表示した様子。今回の文字検出の精度は100%の精度だが、「prob-lems」のように行が変わる際のハイフンは認識・補完できなかった。
ちなみに、過去に撮影済みの写真から、テキストを検出して翻訳することも可能。
あとは、使う機会がどのくらいあるものなのか分からないですが、
端末に届いている SMS を翻訳してくれる機能もあります。
個人的なジャッジ
あくまで個人的な判断にはなるが、ili vs POCKETALK の勝負ならば、
圧倒的に ili の方が面白いと思いました。
ili は割と純粋に会話やコミュニケーションを楽しむことを想像させてくれるのに対し、
POCKETALK は様々な面で今ひとつ魅力に欠ける。設定、通信、音声、価格…。
“翻訳機を超えた、夢の「通訳」機” と謳われているが、現時点ではまだまだ翻訳機を超えてはいないと思う。
ili vs Google翻訳の勝負については、そもそもオフライン vs オンラインという性質の違いがあるので比較すべきではない。むしろ、ili と Google翻訳を組み合わせることによって様々なシーンに対応が可能になると考えたほうが自然かも。
全てに共通して言えること
多少なりとも、翻訳機が出した音声や文章が、おおよそ自分が言いたいことと一致しているのかは判断できたほうが良いです。
➡ 翻訳機は万能ではないわけで、翻訳がおかしいと気づいた際は表現を変える必要があります。
そういった柔軟な対応ができるかどうかは自分自身の問題なんですよね。